スクロール

庵原コッペル10HP最後の難関 −究極の小ささと弊工房への助っ人参入− 2011.1.16

軽便祭に出品させて頂いた最小コッペル10HPの量産が最後の難関に差し掛かっています.軽便祭でも略してありましたが,この親指に乗るくらいの小さなコッペルに「フルワーキング」のMax Orenstein式弁(コッペル弁装置)をかけてしまおうという試みです.コッペル弁にも色々種類があり,可動(モーション・キャンセル)の位置やジョイントの入れ方で数種類有るわけですが,この10HPもガイドヨーク直後という面倒なところに可動位置があります.

写真に映っているのは,その弁装置を作るための部品です.ウローズアップで撮影していますので,大きさがなかなか把握しづらいと思いますが,殆どのリンクの穴は0.3mmと工作が可能な限界に留めています.横にある長いボルト状のものが,滑り弁等の弁棒になる訳ですが,これは何と挽き物なんです.普通でも0.3mmの真鍮線,洋白線は細いなあと思ってしまうのですが,何とそれを挽き物で作ってしまった訳です.無論,量産も一般のところにはなかなか出せず,精密注射針の医療器メーカーに!対応の早さは,流石に工場長です.


で実際作り始めたわけですが,予め作っておいた極小の0.4mm径カシメピンを使おうとエッチング板をドリルでさらったところ破綻しました.うわぁ,強度がとても持たない・・・1/100mm単位でのオーバーエッチングが顕在化したわけです.もうこうなると採算無視.まさに精密さへの挑戦.0.3mm径のカシメピンを急遽設計発注することになりました.年が明けて早々に公開できると甘く見ていたのですが,もう少し御時間を下さい.今はカシメピンなしでごまかしごまかし何とか片側だけ仕上げた状態ですが,おぢさんは眼精疲労で,休日2日寝込んでいます.最後の聖戦でしょうか?

そんなこともあり,弁装置カシメ済みのものもラインナップに加えようかと思っている次第です.丁度勤務先の県内にはカシメの達人がいます.TYM氏に相談しましたところ,快諾を頂きました.そう彼は絶対に出来ないと思っていた,Project-Kのワルシャート弁装置を洋白板切り出しでスクラッチ作って動かしてしまったという猛者です.しかも滑り弁も動くというスグレモノです.弊工房にも加わって頂き,今後も驚異の弁装置の製作に当たって頂こうかと思います.AllanStefensonの機構を見せては,流石にこれはと言われていますが,本人もまんざらではなさそうです.Project-Kを使ったユニークな蒸気も原図もキャスト原型も仕上がっていますが,もう今はコッペルにかかりきりです.

タレットの原型も公開します.極細のピンバイスに固定されています.実は工場長に同種のピンバイスを頂いたわけですが,使いやすいこと.本当に機械工作の世界は奥が深いと感じています.

   

忘れてはならないものが,FSKS-15まで全てお買いあげ頂いた方へのプレゼント機関車です.変態的ボイラキャストはお目にかけましたが,タレットも出来ました.バルブハンドルをかければ出来上がりです.併せてインジェクタもこんな感じになります.非常に小さなものです.これも採算を度外視して作っています.1個1個削りだしの部品が少なくない,まあとんでもない価額になってしまう機関車で,これもごまかし無しのぴったり1/87で作っています.将来,私らが居なくなっても「ああ,あそこの・・・」と思い出して頂ける機関車を目と体が持つ限り作っていきたい,でも残された時間は・・・?そんな気持ちの毎日です.



記念プレゼント超小型機関車の精密タレット

プレゼント超小型機関車のボイラ火室側とインジェクタ